株のデイトレ初心者が絶対に活用すべき「歩み値」の見方とは?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株のデイトレ初心者の多くは「分足チャート」を使ってトレードを行っていますが、それだけではデイトレードを成功させることは困難です。

そこでぜひ使っていただきたいのが「歩み値」というツールです。

「歩み値」とは、「Time & Sales」とも呼ばれますが、どの価格でどれだけの約定数量があったのかをリアルタイムで表示するのです。

株のデイトレを成功させるには、その銘柄に勢いがあるを見定める必要があります。

もちろん「分足チャート」でも、株価に勢いがあるかは分りますが、それだけだとどうしても遅れがちになります。

しかし「歩み値」を使うことで、その瞬間に大量の「買い」や「売り」を把握でき、分足チャートを使うよりも速く、その変化に気付くことが可能になります。

今回の記事では「歩み値」の意味と、活用法についてお伝えいたします。

歩み値の見方を身に付けて、デイトレに役立てていきましょう。

※今回の解説では、チャートソフトにマネックス証券の「マーケットライダープレミアム」を利用しています。

この記事を読んで得られること
  • 板情報の見方が理解できる
  • 歩み値の意味と、その読み方を理解できる
  • 株のデイトレで成功する「歩み値」の活用法が理解できる

板情報とは

板情報とは、個別銘柄の売り注文と買い注文の状況を示したものです。

個別銘柄で既に出ている売り・買いの売買注文が、どの値段でどのくらい出ているのかを一目で見ることができます。

百聞は一見に如かずということで、実際の板情報を見てみましょう。

上図は2020年1月21日大引け時の【6104】東芝機械の板情報です。

現在価格は3,350円ですが、3,340円に2,200株の買い注文が、3,355円に13,300株の売り注文が出ている様子が分かるかと思います。

株価が約定する場合、買い注文は価格が高い順に、売り注文は価格が安い順に約定されていきます。また、板情報に表示されているのは全て指値注文です。

実際の取引においては、成行注文の方が指値注文よりも優先されて約定されることになります。

板情報は取引が行われる度にリアルタイムで更新されていきます。

朝9時以降の取引量が多くなる時間帯には、デイトレ向きの流動性が大きい銘柄の板情報は常に更新されるため、チカチカと画面が光り続ける様子は圧巻です。

ただ、株情報は株価の動きを読むことに使われますが、大口トレーダーが見せ板(大きな注文を出しておき、価格が迫ってくると注文を取り消す行為)による騙し行為を行っていることもあり、また指値の状況は分かっても成行注文の動向を予測することはできないという点で注意が必要です。

このため、板情報だけでデイトレをするのはリスクがある行為であると言えます。

歩み値とは

今回は、板情報とセットで抑えておきたい「歩み値」について詳しく解説していきます。

歩み値とは、ある銘柄が、ある時刻に何円で何株約定したのかを時系列で表したものです。「Time & Sales」とも呼ばれます。

実際の歩み値を見ていきましょう。

上図のように、歩み値は、「時刻」「約定価格」「出来高」の3要素で構成されています。

時刻とは、その取引が約定した時間を示すものです。歩み値は時系列順に並べられるため、時刻が早い順に更新されていくことになります。

約定価格とは、その取引が成立した価格です。特に、約定価格は価格の変動によって色分けされることに気を付けておきましょう。

上図では、価格が上がって約定した場合(アップティック)は赤色、価格が下がって約定した場合(ダウンティック)は青色、価格が変わらずに約定した場合は黒字となっています。

約定価格の色はチャートソフトによって異なるため、自身が使っているチャートソフトではどのようになっているのかを確認しておきましょう。

最後に、出来高とは、その取引がどの位の株数によって成立したかを示すものです。

大口の注文が入ったかどうかを調べる際に要チェックポイントとなります。

歩み値の見方

株価の状態を読むための歩み値の見方を3パターンごとに抑えておきましょう。

株価が買われているとき

株価が力強く買われているときには、歩み値の約定価格はアップティックを示す色が目立つようになります。

上図のように、アップティックを示す色を連続して付けているときは、株価が上昇基調で買われていることを示します。

デイトレのゴールデンタイムである朝の寄り付き後にこのような上昇基調となると、画面がチカチカしている間に株価が一直線で上がってしまうことになるため、すぐに買わないと出遅れてしまうことになりがちです。

株価が売られているとき

株価が売られているときには、歩み値の約定価格はダウンティックを示す色が目立つようになります。

上図のように、ダウンティックを示す色を連続で付けているときは、株価が売られていることを示します。

デイトレにおいては、朝のゴールデンタイムにあまりにも大きく上げ過ぎてしまった銘柄は、このような大暴落フェーズになることが多々あります。

このようなチカチカが始まったら、すぐに逃げなければいけません。

株価が横ばいの状態

株価が横ばいの場合には、歩み値の約定価格は変わらずを示す色が多くなり、アップティック・ダウンティックが同じ位の割合となります。

上図のような歩み値は、横ばいを示す典型的なものです。上がりもせず下がりもせずの状態であるため、デイトレをするには適していません。

ただ、このような状態のときには、ビッグボーイと呼ばれる機関投資家が買い集めている場合もあります。

約定価格が横ばいを示している場合には、出来高の変化に注目しておくようにしましょう。

歩み値をどう読むか

歩み値から株価動向を読むポイントを抑えておきましょう。

歩み値から株価動向を予測するには?

歩み値それ自体をただ見ていても、それだけでは株価の予測をすることは難しいということが現実です。

「アップティックが多いから上昇トレンドである」、「ダウンティックが多いから下降トレンドである」というのは、あくまで今現在の状態を見ているに過ぎず、「そこからどうなるのか?」ということまでは読み取ることはできません。

もちろん、歩み値を読んで、「今は買われている状態だ」「今は売られている状態だ」「横ばいになっている」といった現状認識をすることは重要です。ただ、それだけでは利益を出せる情報には届きません。

歩み値から「これからどのような値動きをするだろうか?」を予測する上では、大口投資家の動向に注目するという方法があります。

大口の出来高が発生した場合に注目!

株価がまだ、上昇・下落のいずれのトレンドになるかも分からない段階で、大口の取引がされることがあります。

機関投資家などの大口の取引が入ると、株価はそちらの方向に流れることが多くなる傾向があるため、歩み値から大きな出来高を見つけることで、株価予測に役立てることが可能です。

つまり、歩み値から大口の出来高を見つけたら、「トレンドが発生する前兆かもしれない……」と推測するのです。

歩み値から大口の出来高を見つけても、それは「大口の買いが入ったのか?」それとも「大口の売りが入ったのか?」のどちらかは分かりません。

ただ、現在のトレンドと合わせて考えれば、推測できる可能性が上がります。

横ばいや下降トレンドのときに大口の出来高を見つけたら「大口のプレイヤーがこれから買い上げようとしているのでは?」と予測することができ、上昇トレンドの時に大口の出来高を見つけたら「大口が売り抜けたからトレンドはそろそろ終わりじゃないか?」と予測することができます。

歩み値の見方を具体的に解説

実際の株価チャートから、歩み値の見方を具体的に見ていきましょう。

次のチャートは、2020年1月21日の【6104】東芝機械の5分足チャートです。

初値は9時3分に3,575円を付け、5分後の9時8分には4,005円まで上昇。

わずか5分で+12%もの値上がりとなり、これ以上ないデイトレ銘柄となりました。ただ、高値を付けてからは急落し、9時25分には3,285円まで大暴落しています。

同銘柄の初値は前日比-3.50%で寄り付きました。寄り付き時点では、ここから5分で+12%もの暴騰になるとは予測することはできません。

ここで、歩み値を見てみましょう。

9時3分の寄り付き直後には横ばいが続いていましたが、突然9,100株もの大口の出来高が発生していることが分かります。

この大口注文が入ったことで、株価は横ばいを脱して一気に上昇していきました。

そして、株価が上昇した9時7分には、今までに見たこともない66,900株もの超大口の出来高が観測されました。

この超大口の取引が入ったことでアップティックを連続して、株価は3,875円から4,005円まで一気に上昇。しかし、株価の上昇はここで終わってしまい、高値から-20%もの大暴落の始まりに……。

結果的には、66,900株の超大口取引は、ビッグボーイの売り抜けだったことが分かります。

売り抜けたビッグボーイの正体が、外国人投資家か機関投資家か大口デイトレーダーかは分かりませんが、歩み値の出来高からその痕跡を読み取ることができます。

まとめ

今回は、板情報と合わせて抑えておきたい「歩み値」について解説してきました。

板情報や歩み値をただ見ていても、それだけでは株価の予測をすることは、難しいということが現実です。

歩み値を見る上では、トレンドが発生する前に「大きな出来高が発生していないか?」に注目することが重要です。

大口投資家の動きは、トレンド転換に繋がることが多いため、上手く役立てていきましょう。

また、歩み値はデイトレにおいて有用なツールとなりますが、歩み値だけでデイトレをするのは、情報として不十分だと言わざるを得ません。

5分足チャートや板情報など、その他のデイトレツールも最大限活用した上で、歩み値からの情報を生かしていくことが重要です。

歩み値の見方を抑えて、自身のデイトレに役立てていきましょう!

紫垣 英昭