【初心者向け】投資信託の税金が発生するタイミングは?確定申告は必要?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

投資信託の商品を検討している、または実際に購入してチャレンジし始めた方にとっては、「投資信託ではどのように税金がかかるの?」「投資信託を始めたら、確定申告しないといけないの?」と、税金まわりも気になるところではないでしょうか。

投資信託で得た利益には、20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税)がかかります。

投資信託で税金が発生するタイミングをはじめ、確定申告が必要なケースや、余分な税金を払わないために確定申告したほうが有利となるケースを解説します。

この記事を読んで得られること
  • 投資信託で税金が発生するタイミングがわかる
  • 納税方法の種類と、自分に合った納税方法の選び方がわかる
  • 非課税で投資信託を始められる「つみたてNISA」の4つのおすすめポイントがわかる

投資信託に税金がかかるタイミングは2回

投資信託で得られる利益には、これから解説する「分配金」「売却益」「償還差益」の3種類があります。

いずれの利益にも20.315%の税金がかかり、その内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です(復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するために設けられた税金で、2037年12月31日まで課税されます)。

それぞれの利益について、利益が発生するタイミング、つまり税金がかかるタイミングごとに説明します。

運用中:分配金に税金がかかる

投資信託の運用によって得られた収益を、保有口数に応じて投資家に還元するお金が「分配金」です。

分配金には、利益を分配する「普通分配金」と、損失分を払い戻す「特別分配金」の2種類があります。

・普通分配金 運用によって生じた利益(個別元本を上回った分)から投資家に支払われるお金を「普通分配金」といいます。

普通分配金は「配当所得」に該当し、分配金が支払われるタイミングで課税されます。

・特別分配金(元本払戻金) 投資信託では、運用によって利益が得られることもあれば、損失が生じることもあるでしょう。

決算ごとに、運用によって出た損失(個別元本を下回った分)は投資家に払い戻されることになっており、そのお金を「特別分配金」といいます。

分配金という名はついていますが、実質的に元本を取り崩して支払われる仕組みであるため、課税対象とはなりません。

換金時・償還時:売却益・償還差益に税金がかかる

場合によっては、運用中の投資信託を売却(解約)することもあるでしょう。 売却して換金した際に得られた純利益から、解約手数料などの諸費用を差し引いた利益のことを「売却益」と呼びます。

売却益は「譲渡所得」として課税されます。

一方、売却せずに運用し続けて運用期間の満期を迎えた場合には、運用終了時点の信託財産の額面総額が投資家に口数に応じて払い戻されます。

運用終了時の払い戻しのことを償還といい、償還金額から購入金額を差し引きした「償還差益」も、売却益と同様に「譲渡所得」として課税されます。

投資信託で税金を抑えるために確定申告は必要?

確定申告とは、個人が1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得を計算して、税務署に申告・納税することです。

投資信託を始めるにあたって口座を開設する際に、「特定口座の源泉徴収あり」を選択すると、損益を計算して自動的に税金を納付してもらえます。

そのため、確定申告の必要はありません。

しかし、次の条件のいずれか1つ以上に当てはまる場合は、投資信託で得た「分配金(配当所得)」「売却益(譲渡所得)」「償還差益(譲渡所得)」について、必ず確定申告を行なわなければいけません。

  • 特定口座(源泉徴収なし)で取引しており、給与以外で得た所得(投資信託を含むすべて)が年間20万円を超える
  • 年間の給与所得が2,000万円を超える
  • 医療費控除などを受けたい

法律上ではこれらの条件に1つも当てはまらない場合、確定申告する必要はありません。

ただし、「必要がない」だけで「申告したほうが得」なケースもあります。

以下にご紹介する3つのケースで該当するものがあるならば、手間はかかるものの、確定申告したほうが税金的に有利です。

配当控除を受けたいとき

配当所得(投資信託の利益でいえば分配金)の納税方法は、以下の3つから選択することができます。

  • 申告不要制度(源泉徴収のみ):特定口座(源泉徴収あり)から自動的に納税
  • 申告分離課税:確定申告で納税
  • 総合課税:確定申告で納税

配当控除とは、一定金額が所得税や住民税から控除される制度のことです。

上記の納税方法のうち、総合課税として確定申告すると、配当控除を受けられるというメリットがあります。

自身の所得金額にかかる税率(国税庁ホームページ参照)を源泉徴収税率(15%)と照らし合わせて、総合課税の税率のほうが所得税を節税できる場合は、総合課税で確定申告するとよいでしょう。

一方で、住民税の総合課税の税率(正味7.2%~8.8%)は、源泉徴収税率(5%)よりも高い税率になっています。

総合課税で確定申告した場合には、別途、住民税の申告を「申告不要制度」もしくは「申告分離課税」で行なうことをおすすめします。

複数の口座で損益通算したいとき

複数口座(NISA口座除く)で投資信託の運用をしている場合は、確定申告で口座間の損失と利益を相殺(損益通算)することができます。

例えば、「ある証券会社の口座Aでは年間100万円の利益が出たが、違う証券会社の口座Bでは年間70万円の損失が出た」というケースの場合、源泉徴収では口座Aの利益100万円に対して課税されます(口座Bは利益がないため源泉徴収なし)。

しかし、損益通算した実質的な年間の利益は、100万円-70万円=30万円です。

このように、「実質的な課税対象の利益は30万円だった」と確定申告することで、多く徴収された税金(このケースだと70万円分にかかる税金)を還付してもらうことができます。

損失を繰越控除したいとき

損益通算の結果、赤字になることもあるでしょう。

その際は、確定申告をすることで、翌年以降3年間、その赤字を繰り越して当年の利益から差し引く(控除する)ことが認められています(NISA口座除く)。

なお、繰越控除をする年と翌年以降3年間は、継続して確定申告をする必要があるため留意しておきましょう。

(参考)株やFXで損した時こそ確定申告!初心者が考えるべき節税対策とは

初心者におすすめ!非課税の「つみたてNISA」で投資信託を始めよう

(引用)金融庁:積立NISA早わかりガイドブック

ここまで投資信託で得た利益にかかる税金について説明してきましたが、最後に、非課税投資ができる「つみたてNISA」をご紹介します。

金融庁は2014年、国民に「貯蓄から資産形成」への動きを促すべく、NISA(少額投資非課税制度)をスタートさせました。

通常、投資信託や株式などで得た利益には税金がかかりますが、NISA口座で運用した利益については税金がかからないというものです。

NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがあり、利用者は口座開設の際にどちらかを選択することになり、両方を選ぶことはできません。

このうち「つみたてNISA」は、少額からの長期・積立・分散投資を利用者に促すことを目的に設けられた制度で、代表的な特徴として、次の6つがあります。

  • 100円から始められて、運用はプロに任せられる
  • 毎年40万円まで、非課税で新規投資できる
  • 2042年12月31日までに購入した投資信託は、購入から20年間、非課税で保有することができる
  • 非課税の対象は、定期的に受け取る分配金と、途中解約したときの売却益
  • 金融庁が「長期・積立・分散投資」の視点で選んだ商品が運用対象で、リスクが少なく初心者でも始めやすい
  • 販売手数料が0円(ノーロード)で、信託報酬(投資信託の保有コスト)も低い

(参考)長期投資で元本割れナシ!積立NISAの基本、運用方法とは

※参考ページでは「積立NISAは2037年までの期間限定」と記載していますが、令和2年度税制改正にて、口座開設可能期間が2042年までと、5年間延長されることになりました。

まとめ

投資信託の運用で得た分配金、解約で得た売却益、運用終了時に得た償還差益には、20.315%の税金がかかります。

所定の条件に当てはまる場合は、これらの利益について確定申告が必須となるため、確定申告の時期までに、自分が条件に該当しているかどうか、よく確認しておくことが重要です。

また、確定申告が必須ではない場合でも、確定申告したほうが節税になるケースもあります。

「配当控除」「損益通算」「損失の繰越控除」の3つの観点で、実践できる節税対策がないか、確認してみることをおすすめします。

国が推進している非課税の「つみたてNISA」なども活用して、上手に資産形成をしていきましょう。

柴垣 英昭