投資信託で利用する特定口座は源泉徴収あり・なしのどちらが良い?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

投資信託の取引を行なう口座を金融機関に開設する際は、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3種類から選ぶことになります。

「それぞれの口座で、何がどう違うのだろう?」「自分にはどの口座が合っているのだろう?」と迷われる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、どの口座を開設するか迷っている方に向けて、特定口座のおすすめポイントや口座の選び方、一般口座との違いについて解説します。 併せて、おすすめの投資信託も紹介しますので、口座開設を検討している方はぜひ参考にしてください。

この記事を読んで得られること
  • 特定口座の「源泉徴収あり・なし」について、自分に合った選び方がわかる
  • 「特定口座」と「一般口座」の違いがわかる
  • 非課税で投資信託を始められる「NISA口座」の利用メリットがわかる

特定口座は「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」のどちらを選ぶべき?

特定口座は、個人投資家の確定申告や納税手続きを簡素化するために、国税庁が定めた「特定口座制度」によって設けられた口座区分です。

特定口座には、「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2種類があります。 「源泉徴収あり」を選択すると、分配金や譲渡益などの利益を受け取ったタイミングでその金額に税金20.315%が課され、自動的に差し引かれます。

その年の1月1日~12月31日に源泉徴収された税金は、金融機関が取りまとめて翌年1月10日までに税務署などに納付してくれます。 つまり、「源泉徴収あり」の特定口座で取引している投資信託については、投資家が自分で確定申告をする必要がありません。

反対に、「源泉徴収なし」の特定口座を選択すると、投資信託の年間利益が20万円を超える場合などは、確定申告が必要となります。

ただし、確定申告の際には、金融機関が作成・送付する「特定口座年間取引報告書」を用いることが可能なため、後述する一般口座での手続きよりは、格段に作業負荷が軽減されるでしょう。

特定口座の「源泉徴収のあり・なし」は、毎年その年の最初の取引が始まる前であれば変更が可能です。

なお、「自分には、源泉徴収あり・なしのどちらが合っているのだろう?」と迷っている方は、以下を参考にしてください。

「源泉徴収あり」を選ぶべき人

「源泉徴収あり」の特定口座が向いている可能性が高いのは、次のような傾向がある人です。

  • 1つの口座だけで資産運用している(損益通算をする予定がない)
  • 資産運用の年間利益が20万円を超える会社員や年金受給者
  • 年間利益が48万円(扶養控除の上限)を超える主婦や学生

「源泉徴収あり」の特定口座を利用している場合は、利益の額によらず確定申告をしなくても問題ありませんが、損益通算や繰越控除をしたい場合は、確定申告することも可能です。

「源泉徴収あり」の特定口座を選ぶデメリットとして大きく挙げられるのは、年間利益が20万円以下でも税金が源泉徴収されてしまう点です。

給与年収2,000万円以下の会社員は、20万円を下回る給与以外の所得については確定申告が不要(所得税を申告・納税しなくても良い)とされているからです。

「源泉徴収なし」を選ぶべき人

「源泉徴収なし」の特定口座が向いている可能性が高いのは、次のような傾向がある人です。

  • 複数の口座で資産運用している(損益通算する予定がある)
  • 資産運用の年間利益が20万円以下

「源泉徴収なし」の特定口座では、投資信託にかかる税金が源泉徴収されない(自動的に差し引かれない)分、年間利益が20万円を超えたときは確定申告が必要です。

その一方で、分配金や譲渡益をそのまま再投資に回せることは、大きなメリットといえるでしょう。

なお、主婦や学生が「源泉徴収なし」の特定口座で年間利益が48万円(扶養控除の上限)を超えると、世帯主は扶養控除を受けられなくなるので注意してください。

特定口座と一般口座の違いも知っておこう

多くの個人投資家は、特定口座を利用しています。

特定口座を利用すると、投資信託の取引で生じた損益について金融機関が自動的に計算し、毎年1月末までに前年1年分の損益を取りまとめた「特定口座年間取引報告書」を投資家に送付してくれます。

特定口座年間取引報告書は、確定申告の添付書類である「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の代替として使用可能です。

一般口座で投資信託の取引をした場合は、確定申告する際、自分で取引の集計や損益計算を行ない、計算明細書を作成する必要があります。

一般口座での取引は、特定口座では取り扱えない未公開株を購入するときなど、限定的でしょう。

「NISA口座」なら一定額まで非課税で投資信託ができる

ここまで説明してきたように、通常、投資信託で得た利益(分配金や譲渡益など)には税金がかかります。

ただし、NISA(少額投資非課税制度)を利用すると、毎年一定額までは非課税で投資信託ができるため、まだ利用していない投資初心者は検討してみてはいかがでしょうか。

NISAには、おもに「NISA」「つみたてNISA」の2種類があり、利用者はどちらを運用するか選んで「NISA口座(非課税口座)」を開設します。

  NISA つみたてNISA
非課税での新規投資枠 年間120万円 年間40万円
運用期間 最長5年 最長20年
ポイント ・投資できる商品が多い(国内株式・外国株式・投資信託)
・期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)が可能
・金融庁が「長期・積立・分散投資」の視点で選んだ商品が運用対象で、リスクが少なく初心者でも始めやすい

「NISA口座」を開設する際は、次の2点に注意しましょう。

  • 1人1口座しか開設できない(年ごとに金融機関を変更することが可能)」
  • 「NISA」「つみたてNISA」は併用できない(1年ごとにどちらを利用するか選択可能)

NISA口座の選び方などは、「【NISA口座開設】株主優待・配当・IPO投資の利益を非課税にする方法とは?」をご覧ください。

まとめ

投資信託の取引を行なう口座は、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3種類から選ぶことができます。

それぞれの違いは、投資信託で得た利益(分配金や譲渡益など)にかかる税金の申告・納付方法にあるといえます。

多くの個人投資家は特定口座を利用しており、一般口座で取引するものは未公開株に限られてくるでしょう。

「源泉徴収あり・なし」どちらを選ぶかについては、この記事で紹介した内容を参考にしてください。

また、NISAを利用すると、毎年一定額まで非課税で投資信託を購入できます。

まだNISA口座を開設していない人は、NISAも活用して資産形成していくことも検討に入れるとよいでしょう。

紫垣 英昭