投資信託の売買には時間差がある!約定日とは?申込日・受渡日との違いも併せて紹介

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

投資信託(ファンド)の運用をする際には、売り買いの際、時間差があること理解しておくことが重要です。投資信託がいつ、そしていくらで売買されるかは、申し込みを行なった時点ではなく「約定日」を基準に決まるためです。 本記事では、「申込日」「約定日」「受渡日」のそれぞれの意味や違いについて紹介するとともに、投資信託を運用する際の約定日や受渡日における注意点について解説します。

この記事を読んで得られること
  • 「申込日」「約定日」「受渡日」の違いがわかる
  • 実際にどれくらいの日数がかかるかわかる
  • 日数のズレによって生じる問題や注意すべき点がわかる

「申込日」は、売買注文がされた日のこと

投資信託の売買注文をした日のことを「申込日」といいます。 ただし、この「申込日」は、申し込んだ日の何時に注文を出したかによって扱いが変わります。 注文締め切り時間内での注文は当日分の申し込み、締め切り時間以降の注文では、翌営業日の申し込み扱いとしているところがほとんどです。 土日祝祭日やファンド休業日に申し込んだ場合も、翌営業日以降が申込日となるため、注文をした日が申込日とならない場合もあるので、留意しておきましょう。

「約定日」は、投資信託の売買がされた日のこと

投資信託に注文を出して、実際の売り買いが成立した日を「約定日」といいます。 販売会社によっては「取引成立日」と呼ぶ場合もあり、投資信託で約定日が重要な理由には、以下の3つがあります。

  • 取引が成立し、お金の受け渡しがいつ行なわれるかが決まる
  • ファンドの売買価格(基準価額)は、約定日によって決まる
  • 分配金を受け取る基準の日になる

このため、約定日を意識して手続きを行なうことが求められます。 通常、約定日から2~5営業日後に売買の決済がされます。約定日を認識しておくことで、入出金の日程が確認できます。 また、投資信託の売買価格(基準価額)については、当日分の申し込みを締め切ったあとに公表される「ブラインド方式」が採用されており、約定日時点の基準価額で売買されます。 そのため、経済状況が大きく変動している場合は、前日と値幅が変化しやすい点に注意が必要です。 確定日は、分配金を受け取る基準にもなります。 利益である分配金の支払いは決算日に決定されるため、約定日が決算日以降になるように売却注文をすることで、分配金を受け取ってからの解約ができます。

「受渡日」は、代金の精算をする日のこと

「受渡日」は、投資信託の売買代金を精算する日となります。 投資信託を購入した場合はファンドの代金を支払う日、売却した場合は売却代金を受け取れる日のことを指します。 受渡日は、一般的には、約定日から2~5営業日後になる場合が多く、受渡日がいつになるのかは、ファンドや販売会社により異なるため、必ず確認しましょう。 売却で得た代金をもとに次の投資を考えている場合は、受渡日を考慮した運用が重要です。

投資信託の「日数のズレ」による注意点

約定日から受渡日までの日数は、ファンドにより異なるため、投資信託を申し込む際には、この「日数のズレ」に注意を払うことが大切です。 ここでは、国内と国外の約定日、NISAを使う場合の注意点を取り上げ、解説します。

投資対象が国内と国外で約定日が異なる

投資対象が国内と国外で約定日が変わることは、重要なポイントの一つです。 国内が対象のファンドでは、原則として締め切り時間内であれば当日が約定日となり、海外が対象のファンドは、時間を問わず申込日の翌営業日が約定日となる場合がほとんどです。 約定日の違いは基準価額の違いに直結するため、注意が必要です。 例えば、NYダウが暴落したタイミングで海外のインデックスファンドを購入したとします。 申込日の翌日に前日NYダウ終値と当日の為替相場を反映して売買価格(基準価額)が算出され、これが約定価格となりますが、一日で大幅に反発し、値を戻すこともあります。 海外ファンドは短期で売り買いするのではなく、約定日を考慮して気長に付き合えるものにするとよいでしょう。

NISA口座で年末に買付するときは受渡日に注意

投資信託を運用する際に、少額投資非課税制度の「NISA」を活用する方もいるでしょう。 このNISA口座で12月後半に取引をする場合、NISAの投資枠が使われるタイミングが受渡日であることに注意が必要です。 例えば、受渡日まで5日かかるファンドを12月27日に申し込むと、約定日は年内に行なえたとしても、受渡日は翌年になるため、翌年分の非課税投資枠を利用することになってしまいます。 また、余ったNISAの投資枠は、翌年に繰り越すことができません。 このため、受渡日が翌年になると、2つのデメリットをこうむることになってしまいます。

  • 使いたい年のNISA投資枠を余らせてしまう
  • 意図せずに翌年の投資枠を使ってしまうため、その分、NISAを使って投資できる非課税枠が減る

このようなことを防ぐためにも、12月になったら受渡日が年をまたがないか注意を払い、取引を進めることが大切です。 ファンドによって約定日から受渡日の日数が異なる点にも注意してください。

まとめ

申込日は売買注文がされた日のことを、約定日は投資信託の売買がされた日のこと、受渡日は代金の精算をする日のことを指します。 申込日・約定日・受渡日については、条件によってズレが生じたり、販売会社によって期間が異なったりする場合があります。 特に、約定日については、売買価格や収益、またはNISA口座の運用などにも関わってくるため、投資信託においては意識をしておくことが重要です。 約定日の意味をはじめ、申込日・受渡日との関係をしっかり理解したうえで、投資信託を始めることをおすすめします。

紫垣 英昭