サイバーセキュリティ関連株10選!サイバー攻撃急増の裏で成長期待!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

新型コロナ禍では、テレワークやオンライン教育が進み、Eコマースも急成長し、政府はデジタル庁の創設を決定するなど、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みました。

ただ、DXが進展する裏で、デジタル犯罪やサイバー攻撃は急増しており、サイバーセキュリティの重要性が加速度的に増しています。

新型コロナ相場では、デジタルトランスフォーメーションに関する銘柄が大きく買われましたが、DXを支えるサイバーセキュリティ関連株も大きく買われている状況です。

今回は、サイバーセキュリティが注目を集める背景について解説した上で、サイバーセキュリティ関連株として押さえておきたい10銘柄をチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • サイバーセキュリティが注目を集める背景についてわかる
  • サイバーセキュリティ関連株として押さえておきたい10銘柄をチャート付きでわかる
  • 今後、どのような視点でサイバーセキュリティ関連株を追っていくべきなのかを考えることができる

サイバーセキュリティとは?

デジタルトランスフォーメーション(DX)と並んで注目されるサイバーセキュリティについて簡単に押さえておきましょう。

サイバーセキュリティ関連株の概要

サイバーセキュリティ関連株とは、サイバーセキュリティシステムやサービスを手掛けるIT企業を総称したテーマ株です。

そもそもサイバーセキュリティとは、個人情報流出を始めとするサイバー攻撃や不正アクセス、不正送金などのサイバー犯罪を防止する取り組みや技術のことです。

殺人や窃盗といった現実世界の犯罪は年々減少していますが、インターネットなどのサイバー空間におけるサイバー犯罪は年々増加しており、巧妙化しています。

特に、2010年以降は、サイバー犯罪の攻撃対象は産業システムにも広まり、攻撃方法も高度化し、犯罪者による金銭目的のサイバー攻撃が増加するなど、社会問題として顕在化しつつある状況です。

多くの企業は、業務を効率化するためにデジタル化を急ピッチで進めていますが、同時にサイバーセキュリティの重要性も増しています。

サイバーセキュリティ関連株は、企業向けにサイバーセキュリティを提供するBtoB企業が多いことから、あまり名前が知られていないIT企業が中心となっていますが、株式市場においては成長テーマ株の一角として注目されるテーマ株です。

新型コロナで進んだDXの裏でサイバーセキュリティの重要性が高まっている

新型コロナ禍では、テレワークやオンライン教育が進み、Eコマースも急成長し、政府はデジタル庁の創設を決定するなど、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みました。

ただ、コロナ禍でデジタル化が急進展した一方で、サイバー攻撃も急増しています。

国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所が発表した「NICTER観測レポート2020」によると、2020年のサイバー攻撃関連通信は2019年比で約1.5倍になったとのことです。

※出典:情報通信研究機構(https://www.nict.go.jp/press/2021/02/16-1.html)

また、警察庁が2021年3月4日に発表した「令和2年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2020年にはサイバー犯罪で検挙された件数が過去最高となるなど、「新たなサイバー犯罪やサイバー攻撃が国内外において発生している状況にあり、サイバー空間における脅威は極めて深刻な情勢」と表現されています。

※出典:警察庁(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R02_cyber_jousei.pdf)

特に、セキュリティが脆弱なIoT機器は狙われやすく、今後はIoTの広まりとともにサイバーセキュリティ対策が急務になってくることは確実な情勢です。

サイバーセキュリティが脆弱な企業は株価にも影響が出る事態に

2020年から2021年に掛けては、サイバーセキュリティの重要性が浮かび上がるニュースが相次ぎ、当該企業の株価にも大きな影響を与えました。

ドコモ口座による不正引き出し事件

2020年8月、NTTドコモが手掛ける電子決済サービス「ドコモ口座」を使って、地方銀行に口座を保有する人の預金が不正引き出しされる事件が発生しました。

総額2,850万円の被害が発生し、NTTドコモが手掛けるキャッシュレス決済「d払い」は一時銀行預金との連携を解消。

「PayPay」など他のキャッシュレスサービスにも影響が出る事態となりました。

これを受けて、NTTドコモ(2020年12月25日にNTTのTOBにより上場廃止)の株価は一時下落する事態にもなりました。

ハッカーから攻撃を受けたカプコン事件

2020年11月、大手ゲーム会社のカプコンが、ハッカー集団「Ragnar Locker」の攻撃を受けて内部情報が流出し、11.5億円の身代金を要求される“カプコン事件”が発生しました。

カプコンは身代金要求には応じなかったものの、個人情報は流出し、ハッカー集団「Ragnar Locker」は未だに逮捕されていません。

カプコン事件は、【9697】カプコンの株価にも一時暗い影を落とすこととなりました。

【9697】カプコンの月足チャート

カプコンの株価は、巣ごもり消費で順調なゲーム株だけあり、新型コロナ禍では絶好調ですが、カプコン事件を受けて2020年11月には一時大きく下落しました(上図赤丸)。

LINEの個人情報アクセス問題

2021年3月、大手通信アプリ「LINE」で、ユーザーの個人情報が、開発元であった中国の関連会社から閲覧できる状態であったことが発覚しました。

総務省からLINEに行政指導が入り、国や地方自治体の一部ではLINEの利用を停止する事態にまで発展。

ZホールディングスがLINEと経営統合した直後のニュースとなり、株価にも大きな影響を与える事態となりました。

【4689】Zホールディングスの月足チャート

Zホールディングスの株価は、LINEの個人情報アクセス問題が発覚した2021年3月以降、大きく下落していることが分かります。

2020年から2021年に掛けては、NTTドコモ、カプコン、LINEといった大企業が、サイバーセキュリティの重要性を株価でもって示すこととなりました。

ただ、このようにマーケットでサイバーセキュリティが重要視されるということは、サイバーセキュリティ関連株は注目されるテーマ株になっているということでもあります。

サイバーセキュリティ関連株10選!

サイバーセキュリティ関連株として注目される代表的な10銘柄を見ていきましょう。

【2326】デジタルアーツ

企業・官公庁・教育機関向けにセキュリティソフトを提供する【2326】デジタルアーツは、成長株としても期待できるサイバーセキュリティ関連株です。

同社が提供するWebセキュリティソフト「i-FILTER」、メールセキュリティソフト「m-FILTER」はいずれも国内導入シェアトップのフィルタリングソフトとなっています。

【2326】デジタルアーツの月足チャート

デジタルアーツの株価は、2019年までは成長株として申し分ない動きとなっていました。

2019年から2020年3月のコロナショックで大きく落としたものの、その後は回復しています。

【4704】トレンドマイクロ

セキュリティ対策ソフト「ウイルスバスター」を手掛ける【4704】トレンドマイクロは、東証を代表するサイバーセキュリティ関連株です。

セキュリティ対策ソフト「ウイルスバスター」は、日本国内のみならず、世界でも高いシェアを誇っていることで知られています。

個人でも導入しているユーザーは少なくないため、サイバーセキュリティ関連株の中では比較的名前が知られている銘柄です。

【4704】トレンドマイクロの月足チャート

トレンドマイクロの株価は、長期的には上昇気味ではありますが、ほぼ横ばいとなっています。

新型コロナ相場でも、そこまで大きな上昇にはなっていません。

ただ、最も代表的なサイバーセキュリティ関連株であることからリスクは低いため、投資初心者でも手を出しやすい銘柄です。

【3562】No.1

中小企業向けにセキュリティサーバーを提供する【3562】No.1は、新型コロナ相場で最も買われたサイバーセキュリティ関連株の一つです。

【3562】No.1の月足チャート

No.1の株価は、コロナショックで2020年3月に付けた298円から、2020年10月には2,317.5円まで急騰しました。ただ、大相場となってしまったため、今後しばらくは手を出すにはリスクがありそうです。

【4475】HENNGE

企業向けにクラウド(SaaS)型セキュリティサービス「HENNGEOne」を提供する【4475】HENNGEは、新型コロナ相場で大きく買われたサイバーセキュリティ関連株です。

【4475】HENNGEの月足チャート

2019年10月にIPOしたHENNGEの株価は、2020年には一直線の上昇となりました。ただ、その反動から2021年には大きく下げています。

【3837】アドソル日進

ソフト開発会社の老舗【3837】アドソル日進は、IoT機器向けセキュリティソフトに力を入れているサイバーセキュリティ関連株です。

同社は、IoT機器をサイバー攻撃から守る「LynxSECURE」などを手掛けています。

【3837】アドソル日進の月足チャート

アドソル日進の株価は、長期成長を体現している値動きとなっています。

【3040】ソリトンシステムズ

ITセキュリティ製品の開発・販売やコンテンツ配信サービスを手掛ける【3040】ソリトンシステムズも、サイバーセキュリティ関連株として注目される銘柄です。

同社は、働き方改革向けテレワークセキュリティ「Secure Access」やネットワークセキュリティ「NetAttest EPS」といったセキュリティソフトを提供しています。

【3040】ソリトンシステムズの月足チャート

ソリトンシステムズの株価は、2018年以降は停滞していましたが、新型コロナ相場で反発、高値圏で推移し続けています。

【3916】デジタル・インフォメーション・テクノロジー

独立系システムインテグレーターの【3919】デジタル・インフォメーション・テクノロジーは、セキュリティソリューション「WebARGUS」を提供しているサイバーセキュリティ関連株です。

【3916】デジタル・インフォメーション・テクノロジーの月足チャート

デジタル・インフォメーション・テクノロジーの株価は、新型コロナ相場でも反発し、2021年は上場来高値を更新中です。

【3968】セグエグループ

セキュリティ製品・ITインフラ製品の輸入やセキュリティソフトの開発を手掛ける【3968】セグエグループも、サイバーセキュリティ関連株に位置付けられる銘柄です。

同社は、セキュリティ製品の代理店の他、自社開発製品としてもセキュリティに強いテレワークソリューション「RevoWorks」を手掛けています。

【3968】セグエグループの月足チャート

セグエグループの株価は、新型コロナ相場で大きく買われ、2020年10月には上場来高値を更新しました。

ただ、その後は下落しています。

【4493】サイバーセキュリティクラウド

AIを使ったサイバーセキュリティサービスの開発・提供を手掛ける【4493】サイバーセキュリティクラウドは、2020年のIPO銘柄の中では最も代表的なサイバーセキュリティ関連株です。

ディープラーニング(深層学習)を用いた攻撃検知AIエンジン「Cyneural」を活用している同社のクラウド型WAF「攻撃遮断くん」は、導入社数・サイト数で国内1位を獲得しています。

【4493】サイバーセキュリティクラウドの月足チャート

サイバーセキュリティクラウドの株価は、IPOとなった翌月には上場価格から約5倍(IPO公募価格からは約10倍)まで急騰しましたが、残念ながら現状では”IPOゴール”と言わざるを得ない値動きとなっています。

【4498】サイバートラスト

サイバーセキュリティ関連株は、IPOするITベンチャー企業が多いテーマ株です。

2020年3月にIPOした【4493】サイバーセキュリティクラウド以外にも、新型コロナ相場中にサイバーセキュリティ関連株の上場は相次いでいます。

SBテクノロジーの子会社で認証・セキュリティサービスなどを手掛ける【4498】サイバートラストは、2021年4月にIPOしたサイバーセキュリティ関連株です。

【4498】サイバートラストの月足チャート

サイバートラストのIPO初値は6,900円となり、公募価格1,660円の4.16倍となりました。

しかし、上場後は荒い展開が続いています。

この他にも、2020年6月にIPOした【4495】アイキューブドシステムズ、2020年11月にIPOした【4494】バリオセキュア、【4015】アララなど、いずれもIPOは成功となっていますが、IPO直後に高値を付けて暴落する”IPOゴール”となっている銘柄が大半です。

サイバーセキュリティ関連株のIPO後、セカンダリー投資することは避けた方が賢明な状況と言わざるを得ません。

まとめ

今回は、サイバーセキュリティが注目を集める背景について解説した上で、サイバーセキュリティ関連株として押さえておきたい10銘柄をチャート付きでご紹介してきました。

新型コロナ禍でテレワークやオンライン教育といったデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んだ裏ではサイバー攻撃が急増しており、サイバーセキュリティの重要性が増しています。

NTTドコモのドコモ口座不正引き出し問題や、カプコンがハッカーから攻撃を受けたカプコン事件、LINEの個人情報アクセス問題などは、当該企業の株価にも影響が出る事態となっています。

サイバーセキュリティ関連株は、新型コロナ相場で大きく上昇した銘柄が多いことはもちろん、長期的に上昇している成長株が目立つテーマ株です。

サイバーセキュリティ関連株は、企業向けにサイバーセキュリティを提供するBtoB企業が多いことから、広く名前が知られている企業は多くありませんが、成長テーマ株として押さえておきましょう。

紫垣 英昭