会社四季報を使った簡単な財務分析で銘柄選び。株式投資に安全・安定な企業とは?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株式投資を始めたばかりの人にとって、銘柄選定は一番悩むところではないでしょうか。

銘柄選定は株式投資の中で最も重要ですので、ベテラン投資家でも判断が難しいところです。

企業として成長していて株価が上がりそうな銘柄を選ぶ必要がありますが、それだけではなく、「銘柄の安全度」も考慮する必要があります。

今回は、安全度が高い銘柄の選定方法を、会社四季報をベースに解説いたします。

最近は、チャート分析での売買が流行っているので、企業の業績・財務面から投資判断をするファンダメンタル分析はあまり詳しくない人が多いでしょう。

なぜなら、企業分析をする場合、会計用語が多く出てくるので、何となく難しそうだと避けてしまうからです。

しかし、私たちは税理士でも会計士でもないので、投資に使う最小限の分析方法だけをこのセミナーで押さえれば大丈夫です。

簡単に安全度が高い会社を見分ける方法をご紹介いたします。

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※この動画は過去に撮影した動画を再編集したものです。市況などは撮影当時のものになります。

※動画では、楽天証券の「マーケットスピード」というソフトを使っています。

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この記事を読んで得られること
  • どのような銘柄を選ぶべきか
  • 会社四季報を利用した会社の安全度の判断方法
  • 株主持分比率、利益剰余金、営業キャッシュフローなどの意味・使い方

銘柄を選定する際の4つのポイント

銘柄を選定するうえで大事なポイントは大きく分けて4つあります。

次の4つのポイントで判断をして、銘柄選びの参考にしてください。

1:13ごろ

会社が安全かどうか(投資資金の安全度)

銘柄選びにはいくつか注意点があります。

お金を投資することになるので、「会社が安全かどうか」これは重要なポイントです。

会社が安全でなければ、株価はなかなか上がりません。
最悪の場合は、いきなり倒産ということもありえます。

2010年にはJAL(9201)、2017年にはエアーバッグのタカタなど大企業でも経営破綻しています。
どんな大企業でも倒産のリスクはあるので、その会社が安全かどうかを見極めて投資をしましょう。

収益が上がっているか(投資リターン)

「収益」「業績」「利益」「一株利益」などの上がり方と、株価の上がり方は基本的に比例します。

そのため、収益などが上がっていれば人気の銘柄になるので、株価も上がっていきます。

逆に、収益等が下がれば、売る人が多くなり株価も下がってしまいますので、「収益が上がっているかどうか」は、大きなチェックポイントです。

POINT!

収益UP↑≒株価UP↑
収益DOWN↓≒株価DOWN↓
収益と株価は基本的に比例する

割安かどうか(買うタイミング)

買うタイミングで重要なのは、「現状の株価が割安かどうか」です。

割高な時に株を買うと、リスクが高く損をする確率も高くなります。

株価が上がっていると魅力的に感じてしまい、心理的に株価が高いところで買ってしまいがちです。

高いところで買うと、今よりも株価が上がらない可能性が高いので、利益になりません。

そのため、「今の株価が割安かどうか」が買いの判断にとても重要です。

日本の株式市場は低迷していると前回のセミナーでお話いたしました。
どこまで下がるかというのは、誰にも分らない話です。

全体的に株価が低迷している時は、内容がいい企業の株価も下がっていることが多いです。

どこで株価が反転するかは、経済状況などいろいろと考えるべきところはありますが、市場全体が低迷している時に、銘柄の研究をして反転の時期に何を買うか考えることを強くおすすめいたします。

POINT!

市場が低迷している時こそ、銘柄を選定するチャンス!

投資家に人気があるか(流動性)

企業の内容がよくても、投資家に人気のない銘柄だと売買数(出来高)が少ないことがあります。

そうなると、買う際に株数を集めるのが大変です。

逆に売る時も、買う投資家が少ないので、自分の売りで値段が下がってしまうことはよくあります。

そのため、「流動性があるかどうか」は重要なポイントです。

会社の安全度をみる5つのポイント

銘柄を選定する際の4つのポイントを挙げましたが、今回は「会社の安全度」について詳しく解説いたします。

会社の安全度をみるポイントは、下記の5点です。

  • 株主持分比率
  • 利益剰余金
  • 有利子負債
  • 営業キャッシュフロー
  • 現金等

これ以外にも安全度をみるための指標はありますが代表的なものを挙げました。それぞれのポイントについて解説していきましょう。

4:18ごろ

株主持分比率(株主持分÷総資産)

こちらは会社四季報の日本電産(6594)についての情報画面です。日本電産は京都に本社があるモーターを製造している有力企業です。

4:42ごろ

会社四季報の財務面を見ると、「株主持分」「株主持分比率」が載っています。

4:54ごろ

日本電産は、株主持分比率が49.1%となっていますが、株主持分比率は、下図の計算式から求められます。

貸借対照表(バランスシート(B/S)とも言います)では、左側が資産、右側が負債と資本になっていますが、総資産に対して株主持分が49.1%ということは、資産に対して負債ではないお金(返済の義務がないお金)の比率が半分くらいであるということです。

株主持分比率は会社によってかなりバラつきがあり、株主持分比率が70%のところもあれば、10%しかない会社もあります。

基本的には、株主持分比率が高ければ高いほど借金は少なく、株主持分比率が低ければ低いほど借金は多くなります。

何%がいいのかは一概には言えませんが、大体50%前後だと安全度が高いと考えていいでしょう。

会社四季報には必ず財務面が載っているので、ぜひチェックしてください。

補足ですが、株主持分比率が高くて負債がないから株価が上がるという訳ではなく、あくまでも、「会社の安全度」をみる指標の1つであるということを認識しておきましょう。

利益剰余金(資本金を超える、会社に溜まるお金)

1年間の売上から、設備投資や役員報酬など出ていくお金を差し引いて、会社に残ったものが利益剰余金として計上されます。

6:25ごろ

先ほどの日本電産の例でみると、利益剰余金が2572億5500万円あります。

6:44ごろ

利益剰余金の下に有利子負債が1187億900万円と載っています。

会社に溜まるお金が約2572億円あってその約半分が有利子負債なので、実質は無借金といえます。

負債比率が低いのでとても安全な会社だと判断できます。

有利子負債(短期・長期借入金、社債)

有利子負債とは、簡単にいうと借入のことで、銀行からの借金だとか会社が発行する社債も有利子負債に計上されます。

7:25ごろ

株主持分比率、利益剰余金、有利子負債のバランスをチェックするようにしましょう。

7:43ごろ

ここのバランスが悪いと、株主持分比率が10~15%くらいだったり、利益剰余金がマイナスであったり、有利子負債が株主持分以上になっていることがあります。

有利子負債が多く、株主持分比率が低い企業は、買いの銘柄から省いた方がいいでしょう。

会社としてはあまり安全ではありません。

営業キャッシュフロー(本業での利益)

営業キャッシュフローとは、本業での儲けのことです。

8:21ごろ

営業キャッシュフローについては、会社四季報の下図の辺りに載っています。

8:24ごろ

商品やサービスを売ることにより入ってくるお金を表しています。

日本電産の例をみると、営業キャッシュフローは900億円です。

8:27ごろ

お金が900億円入ってくるということなので、企業の営業活動としても十分うまくいっています。

会社の中で問題なくお金が回っているので、非常に安全だといえます。

現金等(現金、流動資産、土地など)

最後に現金等についてです。

9:03ごろ

会社四季報だと下図の部分に載っています。

9:06ごろ

日本電産は現金等が1233億円あります。

現金等の中には、銀行などへの預金・流動資産・土地なども含まれています。

会社の業績が悪化しても、資産をお金に変えながら調整をしていくことができます。

そのため、会社の安全性をみるには現金等の金額もチェックする必要があります。

会社の安全度をみるポイント

ここからは、ヤフー(4689)(※現Zホールディングス)で安全度をみていきましょう。

9:32ごろ

ヤフーの財務状況は下記のとおりです。

  • 株主持分比率が約74%
  • 利益剰余金が約3004億円
  • 有利子負債が約100億円
  • 営業キャッシュフローが約1400億円
  • 現金等は約1382億円

有利子負債が利益剰余金に対して3.3%ほどしかないので実質、無借金会社といえます。

株主持分比率が50%以上、利益剰余金が潤沢、有利子負債が比較的低い、安定した営業キャッシュフローがあり、しかも、現金等も潤沢にあります。

こういう会社は非常に安全度が高く、倒産する可能性は極めて低いと判断できます。

ただし、会社の安全度が極めて高くても、株価が上昇するかは別の話です。

会社は安全でも、会社の価値が成長しないと株価は上がりません。

まずは、四季報の数値をみながら、その銘柄が安全かをチェックして、その後に会社の成長性の判断をしましょう。

まとめ

銘柄を選定するには、まず会社の安全度を確認する必要があります。

売上が成長している会社でも、財務的に安全でなくては倒産して投資した資金がなくなってしまうこともあります。

選定した銘柄を安心して保有するためにも、「株主資本比率」「利益剰余金」「営業キャッシュフロー」などで安全度を確認してから買うようにしましょう。

紫垣 英昭