PTS取引の活用法|先回り買いして、他の投資家を出し抜く方法

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

前日、好決算を発表して、当日“ストップ高”になる経験をしたことはありませんか?

もし前日の夜の取引で、好決算を発表した銘柄を買うことができれば、投資収益をあげることができるはず・・・。

それを可能にするのが、夜間取引の“PTS取引”です。

PTS取引なら夜間の株取引が可能なので、日中に取引ができない方でも収益化のチャンスがあります。

また、早朝や昼休みも取引可能なので、出勤前やお昼休み中に取引することが可能です。

今回は、他の投資家より“先回り”して取引できる、PTS取引の活用方法、メリット、デメリットについてお伝えします。

この記事を読んで得られること
  • PTS取引とは何か、メリットとデメリットがわかる
  • PTS取引ができる時間帯、取引できる証券会社がわかる
  • PTS取引の活用法がわかる

PTS取引とは?

PTS取引と聞くと、中々聞き慣れない言葉で難しく感じるかもしれませんが、一言で説明すると、「夜間に取引できる、証券会社ごとの私設取引所」のことです。

PTS取引を上手く活用できれば、上がりそうな銘柄を他の投資家より“先回り”して買うことができます。

これからPTS取引について詳しくお伝えしていきます。

PTS取引が可能な時間は?日中も夜も取引可能!

日本で上場している多くの株の取引が行われる東京証券取引所(東証)は、9時00分から昼休みを挟んで15時00分まで開いており、全ての銘柄の株価はどの証券会社で取引しても同じ(東証の株価)です。また、取引時間も9時00分から11時30分までの前場と、12時30分から15時00分までの後場と決まっています。

一方、PTS取引では、東証が開いている時間に取引が可能なデイタイムセッションと、夜間取引が可能なナイトタイムセッションの2つの時間帯に取引が可能となっています。なお、デイタイムセッションでは、11時30分から12時30分の東証が昼休みのときも取引が可能となっています。

ただ、証券会社ごとにPTS取引の取引可能時間は異なっており、PTS取引を扱っているSBI証券と松井証券では、次のようになっています。

PTS取引と通常取引との違い

通常の株取引とPTS取引の違いについて、簡単にまとめると次の表のようになります。

PTS取引で取引が可能な銘柄は、一部の銘柄を除いて東証で取引可能なほぼ全ての銘柄となります。

また、PTS取引では、通常の株式トレードではできない、昼休み中の取引もすることができます。

PTS取引のメリットは?

PTSの概要について理解したところで、今度はPTS取引のメリットについて見ていきましょう。

PTS取引のメリットは以下の2つです。

  1. 寄り付き前や昼休みや夜間も株式取引が可能
  2. 通常取引よりPTS取引のほうが取引単位が小さく、手数料も安い

以下で一つずつ解説していきます。

寄り付き前や昼休みや夜間も株式取引が可能

PTS取引の最大のメリットは、東証が開いていない夜間にも取引が可能であることです。

東証のザラバ時間中(9:00~15:00)に働いていると、株価の動きを見ながら取引することはできません。

しかし、PTS取引のナイトタイムセッションなら、仕事が終わった後に、株価を見ながら取引することが可能になります。

PTS取引は、「株取引をしたいけど、日中は株価が見れない……」と悩んでいる個人投資家にとっては心強い味方になります。

また、デイタイムセッションには寄り付き前や昼休み中にも取引することができるため、ポジティブサプライズが出て大きく値が動く寄り付き前に仕込んでおくことも可能になります。

通常取引よりPTS取引のほうが取引単位が小さく、手数料も安い

PTS取引では、通常の取引と比べて株価の呼値が最小で1000分の1単位となり、より細かい価格での注文・取引が可能です。

取引所とPTS取引の取引時間が重なる時間帯(9:00~11:30、12:30~15:00)では、取引所の価格よりも有利な価格で取引できる可能性もあります。

また、SBI証券では取引手数料が通常の取引より約5%安くなっており、同じ株価ならPTS取引を利用した方が投資効率が良くなります。

しかし、ザラバ中にPTS取引を行うデメリットもありますので、こちらは次項で詳しく解説していきます。

PTS取引のデメリットは?

前項でPTS取引のメリットをご紹介しましたので、今度はPTS取引のデメリットを見ていきましょう。

PTS取引のデメリットは大きく分けて3つあります。

  1. 取引の流動性が小さ過ぎるため、ザラバ中には向かない
  2. 信用取引ができないので、空売りができない&レバレッジが効かない
  3. PTS取引に対応している証券会社が少ない

これらのデメリットを一つずつ解説していきます。

取引の流動性が小さ過ぎるため、ザラバ中には向かない

PTS取引の最大のデメリットは、通常の取引所と比べて流動性が小さ過ぎるということです。

流動性が小さいということは、有利な価格で取引できない場合もあるので注意が必要です。

このため、取引所とPTS取引の取引時間が重なるザラバ時間中には、通常の取引を行った方が有利になることが多いと言えます。

SBI証券では取引手数料が通常の取引よりも約5%ほど安くなっていますが、流動性が小さいというデメリットはこのメリットを凌ぐケースが多いというのが現実的な所です。

取引時間中と重なる時間帯に取引する場合は、PTS取引ではなく流動性のある通常の取引所を使うように心掛けていきましょう。

信用取引ができないので、空売りができない&レバレッジが効かない

PTS取引では現物の取引しかできず、信用取引はできないので注意しておきましょう。

信用取引ができないということは、レバレッジを効かせることもできず、空売りができないということでもあります。

PTS取引で空売りが可能ならネガティブサプライズの決算を発表などで株価が下落しているときも、空売りで入れるので収益化することも可能となりますが、現状ではできません。

PTS取引に対応している証券会社が少ない

2018年時点では、PTS取引に対応しているネット証券会社はSBI証券松井証券の2社のみです。楽天証券もPTS取引を扱っていますが、8:00~16:20までのデイタイムセッションのみとなっています。

ただ、楽天証券は今後ナイトタイムセッションに対応する方針を示しており、マネックス証券も2019年春からPTS取引サービスを開始するというアナウンスを出しています。

今後、PTS取引に参入する証券会社が増えてくれば、競争原理が働いて手数料が安くなるなどの恩恵も期待されます。

証券会社各社のPTS取引に関する続報に注目しておきましょう。

PTS取引ができる証券口座は?取引時間帯や手数料は?

2018年現在、夜間を含めたPTS取引ができるネット証券会社は、SBI証券と松井証券の2社だけとなっています。

SBI証券と松井証券のサービスの違いは次の表のようになります。

SBI証券と松井証券の違いは、取引時間と手数料になります。

手数料の違いについて詳しく見ていきましょう。

SBI証券では、取引1回ごとの約定価格によって、以下の表の手数料が取引ごとに発生します。

松井証券では、1日の約定代金の合計によって、以下の表の手数料が1日ごとに発生します。

SBI証券と松井証券のどちらがいいのかは取引スタイルによって変わるため一概には言えませんが、口座開設だけなら無料であるため、両方の証券会社に口座を開設しておくことを推奨します。

SBI証券の口座開設はこちら

松井証券の口座開設はこちら

PTS取引の活用方法

PTSを行うための口座の準備方法はご理解いただけましたか?

それでは、PTS取引の活用方法を見ていきましょう。

ポジティブサプライズが出た銘柄を大引け後に買う

良好な決算や投資家の期待を煽るニュース(ポジティブサプライズ)が出た銘柄は、翌日に高く寄り付くことが多いです。

このように前日の価格から大きく跳ね上げるような値動きを、空白を開けて上昇したことからギャップアップ(GU)と呼びますが、通常の取引ではこの空白の部分から利益を上げることはできません。

そこで、ポジティブサプライズが出た銘柄をPTS取引で買っておき、翌日に高く寄り付いてから通常の市場で売るという戦略が有効になってきます。

特に、重要な決算やニュースは大引け後に出されることが多いため、PTS取引を最大限に活用していきましょう。

ただし先ほどもお伝えしたように、PTS取引は流動性が低いので、希望の価格で買えない可能性もありますのでご注意してください。

ダウや円相場の動向を見て寄り付き前に買う/売る

日経平均及び多くの日本株は、前日のニューヨークダウや円相場の動向に、寄り付き価格が大きく左右されます。

ダウが大きく上げれば日経平均も上昇し、ダウが大きく下げれば日経平均は下落する傾向があります。また、円相場が円安になれば調整作用から日本株は買われやすくなり、円相場が高くなれば日本株は売られやすくなる傾向があります。

そこで、前日のダウ平均や円相場の動向を見ながら、PTS取引を使って寄り付き前の時間帯に物色したり、寄り付き前に保有銘柄の売却をすることが可能です。

昼休み時間中のサプライズに備える

大引け(15:00以降)に比べたら多くはありませんが、昼休み時間中に重要なニュースが出されることも多々あります。

例えば、日銀の政策会合は昼休み時間中に終わることも多く、PTS取引を使えば、後場寄り前に物色したり、リスクヘッジのための保有銘柄売却をすることも可能です。

また、日中のマーケットは見れないけど、東証の昼休み時間帯だけは見れる人なら、この時間帯だけPTS取引を使って取引するということも可能です。

取引時間中にサヤ取りをする

場が開いているデイタイムセッション中には、取引所の板情報とPTS取引の板情報を見ることによって、価格差を利用したサヤ取り(裁定取引)が可能になります。

例えば、ある銘柄が同じ時間に、東証では1,000円を付けている一方で、PTS取引所では980円を付けている場合は、PTS取引で980円で買って、即座に東証で1,000円で売れば、20円のサヤ取りをすることが可能です。

ただし、これだけ聞くと裁定取引は簡単なように思えますが、今や世界中のヘッジファンドがアルゴリズム取引を駆使しています。

裁定取引は決して簡単な取引方法ではないということはしっかりと留意しておくようにしましょう。

まとめ

今回は、PTS取引について詳しく見てきました。

PTS取引のメリットとしては、時間外取引が可能であるため、日中場を見れない個人投資家が夜間に株価を見ながら取引をすることが可能になることが挙げられます。

一方、PTS取引のデメリットとしては、流動性が小さいためリスクが大きく、PTS取引を扱っているネット証券はSBI証券と松井証券しかないことが挙げられます。また、信用取引はできないため、空売りによる収益機会は望めません。

ただ明日の取引で、寄付きから大きく価格が上がりそうな銘柄を察知することは可能なので、上手く活用し収益機会を狙っていただきたいと思います。

紫垣 英昭