新型コロナ第三波・緊急事態宣言で注目なのは巣ごもり消費関連銘柄?

執筆者
プロフィール写真

紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

新型コロナ第三波の到来で、マーケットでは「巣ごもり消費」に再び大きな注目が集まりそうです。

ネット通販やフードデリバリー、ゲームや電子コミックといった巣ごもり消費関連銘柄は、2020年4月の緊急事態宣言の発令をきっかけに大きく買われており、2020年新型コロナ相場を代表するテーマ株となっています。

新型コロナ第三波が止まらず、再び緊急事態宣言が発令される事態となれば、巣ごもり消費関連銘柄は再び大きく買われることになりそうです。

今回は、巣ごもり消費の概要や新型コロナ第三波で注目される背景について解説した上で、代表的な巣ごもり消費関連銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 巣ごもり消費の概要や新型コロナ第三波で注目される背景がわかる
  • 代表的な巣ごもり消費関連銘柄がチャート付きでわかる
  • 巣ごもり消費関連銘柄と併せて抑えておくべきことがわかる

巣ごもり消費とは?

巣ごもり消費が注目される背景や巣ごもり消費関連銘柄の概要について抑えておきましょう。

巣ごもり消費が注目される背景

巣ごもり消費とは、外出することを避けてネット通販などを利用し、自宅で消費を完結させるライフスタイルのことです。

特に、2020年4月には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言が発令されたことで、「ステイホーム」を合言葉に多くの人が不要不急の外出を自粛するようになり、巣ごもり消費は急拡大しました。

巣ごもり消費の拡大は、新型コロナによって2020年日本で最も大きく変わったライフスタイルと言っても過言ではありません。

「2020ユーキャン新語・流行語大賞」では、巣ごもり消費を意味する「オンライン○○」がトップ10に入りましたが、2020年に大ブームとなったゲーム「あつ森」、動画配信でブームとなった韓国ドラマ「愛の不時着」、電子コミックやアニメで社会現象となっている「鬼滅の刃」は、いずれも巣ごもり消費の拡大を背景にブームとなったと言ってよいでしょう。

巣ごもり消費の具体例としては、買い物をネット通販にし、外食はフードデリバリーを利用し、レンタルビデオではなく動画配信サービスを利用することなどが挙げられます。

これらは分かりやすい例ですが、ライブではオンライン配信を利用し、ジムや飲み会はVRを使ったサービスを利用するなど、オンラインでは代替不可能だと思われていたサービスでも、テクノロジーを活用した巣ごもり消費が広がっていることも特徴です。

巣ごもり消費関連銘柄で注目のセクター・テーマ株

2020年には、ほぼ全ての分野で巣ごもり消費が拡大しましたが、マーケットで注目される巣ごもり消費関連銘柄は特定のセクターやテーマ株に集中しています。

まず、「ネット通販(Eコマース)」を手掛けているIT企業は、巣ごもり消費関連銘柄の代表的な銘柄となっています。

巣ごもり消費が拡大した2020年は、ネット通販大手だけではなく、あらゆる業種でネット通販事業が伸びている状況です。

外食業界が新型コロナで大打撃を受ける一方、食べ物を自宅まで届ける「フードデリバリーサービス」は新型コロナで大きく伸びました。

新型コロナがきっかけとなり、UberEatsや出前館といったフードデリバリーサービスを初めて利用した人は多く、その利便性の高さからアフターコロナにおいても成長産業であり続けることが期待されます。

また、ライブやスポーツといったエンタメ産業は新型コロナでダメージを受けていますが、その一方で、「ゲーム」や「電子コミック」、「動画配信サービス」といった巣ごもりコンテンツは大きく伸びました。

ゲームの「あつ森(あつまれ どうぶつの森)」、韓国ドラマの「愛の不時着」、漫画・映画で社会現象を起こしている「鬼滅の刃」が流行語大賞となったことは、巣ごもり消費の拡大を象徴している出来事です。

新型コロナ第三波で巣ごもり消費関連銘柄が再び大きく買われる!?

2020年11月から12月に掛けて、日本中で新型コロナ第三波が広がっています。

政府は「勝負の3週間」と銘打ち、感染防止対策を徹底するように呼び掛けたものの、感染者数が減少する傾向は見られません。

12月17日(木曜日)には、東京都で過去最多の822人の感染が確認され、全国でも過去最多となる3,211人の感染が確認されました。

感染者は木曜日に多くなる傾向がありますが、東京では12月18日、12月19日、12月20日、12月21日にも曜日ごとの過去最多を更新しており、7日連続で曜日最多を更新。感染拡大に歯止めが掛からない状況です。

政府は「Go Toキャンペーン」を年末年始に停止する措置を取りましたが、年末年始を迎えて人手が増えることが予想されるため、目に見える効果が出るかどうかは未知数です。

今後、新型コロナ第三波の拡大が止まらなければ、2020年4月以来の緊急事態宣言の発令も視野に入ってくるものと見られます。

緊急事態宣言が発令されれば、巣ごもり消費がさらに拡大することは間違いなく、マーケットでは巣ごもり消費関連銘柄の一段高が期待されます。

ネット通販(Eコマース)

ネット通販(Eコマース)を展開するIT企業は、巣ごもり消費関連銘柄の代名詞とも言えるセクターです。

日常生活でもおなじみの身近な銘柄が多いため、投資初心者にもおすすめのセクターとなっています。

【4689】Zホールディングス

ネットポータルサイト「Yahoo!ジャパン」を中心にネット通販「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」を展開する【4689】Zホールディングスは、巣ごもり消費の恩恵を大きく受けた銘柄です。

【4689】Zホールディングスの月足チャート

Zホールディングスの株価は、2014年から2019年までは停滞しており、一時は300円を割り込む展開となっていました。

しかし、巣ごもり消費が拡大した2020年には大きく上昇したことが分かります。

【4755】楽天

ネット通販「楽天市場」を展開する【4755】楽天は、東証を代表するネット通販企業であり、巣ごもり消費拡大の恩恵を受けた銘柄です。

【4755】楽天の月足チャート

楽天の株価は、2020年には上がってはいますが、そこまで大きく上がっているとは言えません。

この背景には、モバイル事業が足を引っ張っていることが挙げられます。

楽天が2020年11月に発表した2020年度第3四半期決算を見てみると、楽天市場などのコア事業では増収増益となっているものの、モバイル事業の赤字が響き、連結では赤字転落となっています。

菅政権が進める携帯料金値下げでも悪影響を受けると考えられるため、巣ごもり消費が拡大しても厳しい状況です。

【4385】メルカリ

フリマアプリ最大手の【4385】メルカリも、巣ごもり消費の拡大で恩恵を受けたネット通販銘柄です。

【4385】メルカリの月足チャート

メルカリの株価は、2018年6月のIPO以来は低迷していましたが、2020年にV字回復を遂げたことが分かります。

また、新型コロナ相場ではマザーズ市場全体が大きく買われたことも追い風となりました。

【4477】BASE

Eコマースプラットフォーム「BASE」を手掛ける【4477】BASEは、巣ごもり消費関連銘柄として2020年に最も大きく買われた銘柄です。

【4477】BASEの月足チャート

BASEの株価は、2020年3月13日に付けた774円から、10月8日には17,240円まで上昇しており、最大22.27倍となっています。マーケットでの巣ごもり消費への関心度の高さを象徴する銘柄です。

ただ、既に急騰しきっていて暴落リスクが高くなっているため、これから投資する際にはリスク管理が必須となります。

フードデリバリー

UberEatsや出前館といったフードデリバリーサービスも、巣ごもり消費関連銘柄として注目されるテーマ株です。

【2484】出前館

フードデリバリーサービス「出前館」を展開する【2484】出前館は、巣ごもり消費拡大で認知度も上がり、マーケットでも大きく買われました。

【2484】出前館の月足チャート

出前館の株価は、2020年3月のコロナショック以降は上昇し続けています。

新型コロナ第三波が到来した2020年12月には上場来高値を更新しました。

長期チャートで見ると驚異的な成長株となっており、2013年1月から2020年12月までで最大82倍(50.8円→4,200円)となっています。

ただ、同社は2020年10月に発表した決算では、広告費などの先行投資が響いたことで赤字継続となっており、黒字化できていません。

あくまで期待感で上昇し続けている新興銘柄であることは留意しておきましょう。

【3182】オイシックス・ラ・大地

有機野菜や青果物、加工品など食物のネット販売を手掛ける【3182】オイシックス・ラ・大地は、巣ごもり消費拡大で絶好調のフードデリバリー株です。

【3182】オイシックス・ラ・大地の月足チャート

オイシックスの株価は、2020年に急伸となっており、上場来高値も更新しています。

この上昇は業績にも裏付けられており、2020年11月に発表した第2四半期決算では、在宅勤務の拡大などによる家庭内の食事が増加したことを背景に営業利益が4.4倍になったと発表しています。

東証一部銘柄の中でも、巣ごもり消費拡大の恩恵を大きく受けた銘柄の一つです。

ゲーム・電子コミック・動画配信

巣ごもり消費で需要が急拡大したゲームや電子コミック、動画配信サービスを手掛けている銘柄を見ていきましょう。

【7974】任天堂

世界的ゲームメーカーの【7974】任天堂は、新型コロナによる世界的な巣ごもり消費拡大の恩恵を受けた銘柄です。

ゲーム機「ニンテンドースイッチ」は品薄となっており、ゲームソフト「あつまれどうぶつの森」は「あつ森」が流行語大賞となるなど全世界で大ヒットを記録しています。

【7974】任天堂の月足チャート

任天堂の株価は、2020年は絶好調そのものです。

クリスマス効果と新型コロナ第三波が重なった2020年12月には一段高となっています。

決算では一人勝ちとなっており、2020年11月に発表した第2四半期決算では経常利益が前年同期比の3.5倍に急拡大。配当金も420円増額することが発表されました。

唯一ネックとなるのが、最低投資金額が600万円以上となっており、個人投資家にはやや手がだしづらい点です。

【9697】カプコン

「バイオハザード」や「モンスターハンター」「ストリートファイター」といった人気ゲームタイトルを手掛ける【9697】カプコンも、巣ごもり消費拡大の影響で株価が上昇しました。

【9697】カプコンの月足チャート

カプコンの株価は、2020年に一段高となっています。

ゲーム株は2020年に全体的に好調ですが、ゲーム株の中でも特に強い銘柄です。

2020年11月には、同社がサイバー攻撃を受けた「カプコン事件」が発生して下げましたが、一時的な下落に留まっており、12月には上場来高値を再更新しています。

【3658】イーブックイニシアティブジャパン

人気マンガ「鬼滅の刃」が社会現象となる中、電子コミックも巣ごもり消費で急拡大しています。

電子コミックストア「ebookjapan」を運営する【3658】イーブックイニシアティブジャパンは、電子コミック関連として代表的な銘柄です。

【3658】イーブックイニシアティブジャパンの月足チャート

イーブックイニシアティブジャパンの株価は、2020年に大きく上げたことが分かります。

特に、緊急事態宣言が発令された2020年4月には大陽線の急騰となりました。

この他にも、電子コミックサービス「まんが王国」を手掛ける【3981】ビーグリーや、「コミなび」を運営する【3678】メディアドゥなど、電子コミックを手掛ける銘柄は2020年に大きく上げています。

【9418】USEN-NEXT HOLDINGS

動画配信サイト「U-NEXT」を展開する【9418】USEN-NEXT HOLDINGSは、動画配信関連銘柄として注目される銘柄です。

【9418】USEN-NEXT HOLDINGSの月足チャート

USEN-NEXT HOLDINGSの株価は、コロナショック以降も停滞しており、2020年には大きく上げたとは言えません。

日本の動画配信サービスは、「Netflix」と「Amazonプライム」が高いシェアを誇っており、「U-NEXT」はこの2社に続く3位となっています。

なお、「Netflix」と「Amazonプライム」はいずれもアメリカ企業です。

動画配信サービス4位の「Hulu」を展開する【9404】日本テレビホールディングスも株価低迷しており、動画配信関連銘柄は2020年に買われているとは言えません。

まとめ

今回は、巣ごもり消費の概要や新型コロナ第三波で注目される背景について解説した上で、代表的な巣ごもり消費関連銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

巣ごもり消費関連銘柄は、ネット通販やフードデリバリー、ゲームや電子コミックなどを手掛けている銘柄を中心に、2020年の新型コロナ相場で大きく買われています。

特に、2020年4月の緊急事態宣言の発令を機に買われた銘柄が多く、任天堂やオイシックスなど多くの銘柄が、巣ごもり消費需要を取り込んだ好業績を伴う株価上昇となっています。

巣ごもり消費関連銘柄は多くの銘柄が上場来高値を更新するなど既に大きく上げていますが、新型コロナ第三波を受けて2020年12月に一段高となっている銘柄も少なくありません。

今後も、新型コロナ第三波の感染状況や緊急事態宣言を含む政府の外出自粛要請と併せて、巣ごもり消費関連銘柄を抑えておきましょう。

紫垣 英昭