株式市場2021年の年末相場はどうなる?直近5年分のチャートから徹底予測!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

「年末相場は上がりやすい」と言われていますが、近年は米中貿易摩擦(2018年)やイラン問題(2020年)などで苦しい展開が目立ちます。

ただ、年始の大発会は新年への期待を込めて買われる“ご祝儀相場”となることが多く、注目銘柄は特に大きな値上がりになりやすいためチャンスが多いことも確かです。

2021年の年末相場は、感染者数が急減したことを受けてのアフターコロナ関連銘柄や、自民党が勝利したことで岸田新政権の経済政策に注目が集まります。

今回は、年末相場の特徴や2016年~2020年までの過去5年間の年末相場について振り返った上で、2021年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点について解説していきます。

この記事を読んで得られること
  • 年末相場の特徴や2016年~2020年までの過去5年間の年末相場について振り返ることができる
  • 2021年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点がわかる
  • 年末相場のイメージを考えることができる

株式市場の年末相場とは?

株式市場における年末相場とは、年末年始に掛けての相場動向のことを指します。

東京証券取引所では、1年間の取引最終日は「大納会(だいのうかい)」、1年の初めに取引が開始される日は「大発会(だいはっかい)」と呼ばれており、大体的なイベントも開催されます。

大納会では、その年の顔となった人をゲストに呼び、立会終了の鐘を鳴らすことが恒例です。

大発会では、若い女性たちが晴着姿で参加して、1年の取引開始の鐘を鳴らすことが東証の風物詩となっています。

大納会は原則として12月30日となっており、12月30日が休日の場合はその直前の営業日となります。

大発会は原則として1月4日となっており、1月4日が休日の場合にはその翌営業日に行われます。

2021年の大納会は2021年12月30日(木曜日)、2022年の大発会は2022年1月4日(火曜日)と原則通りです。

なお、2020年は新型コロナ感染拡大防止のため、大納会・大発会ともに規模を縮小して行われましたが、2021年がどうなるかは11月時点ではまだ東証から発表されていません。

2021年の大納会・大発会カレンダー

年末相場の最大のリスクは、大納会から大発会の間は休場となることです。

年末相場(大納会・大発会)は華やかな雰囲気で行われ、ご祝儀相場が期待できる面もありますが、持ち越しリスクがあることに注意しておきましょう。

直近5年間の年末相場はどうなっていた?

「年末相場はご祝儀相場になるから株価は上がりやすい」と相場格言のように言われることがありますが、本当でしょうか?

直近5年間(2016年~2020年)の年末相場について、日経平均株価で確認してみましょう。

※2016年~2019年については、文章・画像ともに元記事の内容そのままとなります。

2016年の年末相場

トランプ大統領誕生直後の2016年の年末相場は、ご祝儀相場となりました。

2016年末の日経平均株価の日足チャート

2016年の大納会は12月30日、2017年の大発会は1月4日でした。

大納会はトランプ大統領誕生からの上昇相場の利益確定売りが出たことから下げましたが、大発会はご祝儀相場に。

ただ、大発会以降は下げています。

株価チャートを見てみると、トランプ大統領誕生から年末にかけて上昇トレンドとなっており、年末相場に利益確定売りが出て売られたのも仕方ない動きとなっていたことが分かります。

2017年の年末相場

2017年の年末相場も、ご祝儀相場となりました。

2017年末の日経平均株価の日足チャート

2017年の大納会は12月29日、2018年の大発会は1月4日でした。

大納会は横ばいでしたが、大発会には大きく上げたことが分かります。

2018年の年末相場

2018年の年末相場は、米中貿易摩擦の煽りを受けた暴落相場となりました。

2018年末の日経平均株価の日足チャート

2018年の大納会は12月28日、2019年の大発会は1月4日となり、休場日が例年より2日多くなっていました。

日経平均は2018年10月に付けていた24,000円台から12月には一時19,000円を割り込む展開に。

大納会・大発会ともに下落しており、米中貿易摩擦による暴落相場の影響が年末相場にも現れていたことが分かります。

日本では新元号が期待されていたものの、ご祝儀相場にはなりませんでした。

ただ、日経平均はこの年末に安値を付け、2019年は緩やかな上昇相場に。2018年の年末相場は絶好の押し目だったことになります。

2019年の年末相場

オリンピックイヤーが期待された2019年の年末相場は、年末相場の持ち越しリスクが表出してしまう展開となりました。

2019年末の日経平均株価の日足チャート

2019年の大納会は12月30日、2020年の大発会は1月6日となり、休場日が例年より2日多くなっていました。

大納会は下落し、大発会には大きく下げました。

大発会に大きな下落となった背景には、2020年1月3日にアメリカがイラン革命防衛隊司令官のソレイマニ氏を殺害したと声明を出したことで、中東リスクが再燃したことが要因です。

まさに、年末相場のリスクが出てしまったと言えます。

その後、イラン問題は収束して株価も戻っていきましたが、株式市場は新型コロナウイルスというさらなる大きな問題に直面していくことになります。

2020年の年末相場

新型コロナ相場となった2020年の年末相場は、大きな値動きとなりました。

2020年末の日経平均株価の日足チャート

2020年の年末相場は、11月にファイザー・モデルナがワクチン開発に成功したことを受けて、世界的に株価が一段高となった中で迎えた年末相場となりました。

また、2020年秋には世界的な脱炭素やEVシフトの波が吹き荒れたことで、EVや再生エネルギー、水素といった脱炭素テーマ株が急騰。

なお、日本では新型コロナ第三波が猛威を振るっており、ワクチン開発のニュースがあったとはいえ、オリンピックの開催は絶望的な風潮となっていました。

年末相場の特徴やアノマリー、上がりやすい銘柄とは?

年末相場の特徴やアノマリー、上がりやすい銘柄について押さえておきましょう。

年末相場格言「掉尾の一振(とうびのいっしん)」

年末相場の特徴、アノマリーを示す相場格言として「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という言葉が広く知られています。

「掉尾(とうび)」とは、物事の終わりの方になって勢いが盛んになることです。

つまり、「掉尾の一振」とは、年の終わりの大納会に向けて株価の勢いが増すという意味で使われます。

株価が年末に掛けて上昇する背景としては、機関投資家が年内に含み損を解消するための売りが一巡してから、年末に掛けて決算目的のドレッシング買いをすることが要因の一つと考えられています。

年末相場に上がりやすい銘柄とは?

年末相場は「掉尾の一振」と言われるものの、直近5年間の年末相場を見てみると、大納会には下げている展開が目立ちます。

近年は「掉尾の一振」のアノマリー通りにはなってないと言わざるを得ません。

ただ、年始の大発会からはご祝儀相場となって上げている展開が見られます。

特に、新年に期待されるテーマ株は、ご祝儀相場として上がりやすい傾向があると言えます。

2018年の年末相場は米中貿易摩擦によって下げましたが、日本では新元号が期待されていたことから新元号関連銘柄が大きく上がりました。

包装資材や紙製品製造大手の【7919】野崎印刷紙業は、カレンダー大手としても知られており、新元号への期待から2018年の年末相場には大きく買われました。

2018年末の【7919】野崎印刷紙業の日足チャート

野崎印刷紙業の株価は、2018年12月25日には292円まで下落していましたが、2019年1月8日は一時458円まで上昇し、この年末相場で最大+50%以上の上昇となりました。

また、2019年から2020年に掛けての年末相場はイラン問題で大きく下げましたが、防衛関連銘柄は大きく上昇。

海上自衛隊向けの機雷などを手掛ける【6208】石川製作所は、2020年の大発会からストップ高となりました。

2019年末の【6208】石川製作所の日足チャート

石川製作所を始め、【4274】細谷火工や【6203】豊和工業などの防衛関連銘柄は2019年の年末相場では最強の銘柄となりました。

2020年から2021年に掛けての年末相場では、脱炭素が大きく注目されていたこともあり、水素関連銘柄や再生可能エネルギー関連銘柄といった脱炭素関連株が大きく上昇しました。

日本国内で水素の最大シェアを誇る【8088】岩谷産業などの脱炭素関連株は、2020年12月から2021年1月の年末相場に大きく買われる展開に。

2020年末の【8088】岩谷産業の日足チャート

年末相場は相場全体が大きく動きやすいことから、注目銘柄や注目テーマはより大きく動きやすい傾向があります。

2021年の年末相場に買われそうなテーマ・銘柄候補

2021年の年末相場に買われそうなテーマや銘柄候補についていくつか抑えておきましょう。

アフターコロナ関連銘柄

日本ではワクチン接種が急速に進み、感染者数が急減していることから、2021年の年末に掛けてはアフターコロナの経済正常化が本格化してくることが期待されます。

感染者数が落ち着いていることを受けて、10月には飲食店の時短営業が解除され、11月からはイベントの人数制限が緩和、さらに外国人の入国制限も緩和されました。

運輸株や旅行株、外食株、エンタメ株といった、コロナ禍で消費が抑えられていたアフターコロナ関連銘柄は要チェックしておきましょう。

また、製薬大手ファイザーは、新型コロナウイルスの経口治療薬を開発中であると報じられており、この治療薬が開発されればアフターコロナの個人消費はさらに活発化することが期待されます。

ワクチン接種で感染者数が落ち着き、治療薬も本格的に普及してくるとなれば、訪日外国人も増えるであろうことから、アフターコロナ関連銘柄の中でも「インバウンド関連銘柄」に焦点が当たってくるかもしれません。

資源・エネルギー関連銘柄

世界経済は回復を続けていますが、原油やLNG(液化天然ガス)、石炭など資源価格の高騰が世界経済リスクになり始めています。

ガソリン価格は高騰し、今冬の電気代も大幅な値上げが避けられないなど、資源・エネルギーの大半を輸入に頼る日本経済にとっても、資源・エネルギー高は懸念材料となりつつあります。

一方で、資源・エネルギーを手掛ける銘柄にとっては、資源・エネルギー高はプラス材料です。

資源開発最大手の【1605】INPEX(国際石油開発帝石)や、石油元売り大手の【5020】ENEOSホールディングスや【5019】出光興産、資源に強い総合商社の【2768】双日や【8031】三井物産といった銘柄は、資源・エネルギー高を背景に買われています。

逆に、資源・エネルギー高がマイナスとなる電力会社やガス会社は売られていることには注意しておきましょう。

岸田政権の政策関連(岸田関連銘柄)

2021年10月31日に行われた衆議院選では、事前予想に反して自民党が大勝し、岸田新政権の船出は上々の結果となりました。

岸田政権は、発足当初は金融増税を検討したことがマーケットから嫌気されて売られたものの、分配路線一辺倒ではないことを表明したことを受けて、株価は戻しています。

ただ、2020年9月に発足した菅政権はデジタル庁や携帯料金値下げといった独自政策を打ち出しましたが、岸田政権は「新しい資本主義」というスローガンを掲げるものの、特にこれといった成長戦略が見えてこないのも確かです。

2021年11月中にも策定される経済政策は30兆円規模になると見られています。

この内容次第では、2021年の年末相場に大きな影響を与える可能性もあるため、注視しておくようにしましょう。

年末相場の注意点

年末相場の注意点を抑えておきましょう。

持ち越しリスクが発生する

年末相場の最大のリスクは、大納会から大発会の期間までに最短4日以上の持ち越し期間が発生してしまうことです。

この期間中にイラン問題が発生した2019年の年末相場では、まさにこのリスクが現実化してしまいました。

2021年の大納会は12月30日、2022年の大発会は1月4日となっており、持ち越し期間は最短の4日間です。

ただ、2020年年初のイラン問題のように何があるかは分かりません。

過去の年末相場を見ると、年始の大納会に保有していたとしても、大発会の寄り付きに特別大きな上昇となったケースはほとんどなく、大発会の寄り付きから買ってもご祝儀相場に乗ることはできました。

このため、持ち越しリスクを最小限とするため、大納会に利益確定してしまい、大発会の寄り付きに買い戻すという投資戦略を取ることもアリと言えるでしょう。

ただ、利益確定することで税金が確定してしまうことには注意しておきましょう。

長期投資をしている場合にはそのまま保有しておくことが賢明です。

大納会には利益確定売りが出やすい

年の終わりである大納会には、機関投資家やヘッジファンドがその年の利益確定するための売りが出やすい傾向にあります。

世界経済が回復しているとはいえ、世界的な株高傾向が続いており、資源・エネルギー高や、恒大集団など中国の経済減速も懸念されています。

2021年の年末相場は、利益確定売りに押されて大きく下落する展開になることも十分に考えられます。

少なくとも、「年末相場だから、ご祝儀相場になる!」と安易に考えるのではなく、株価チャートを見るなどして年末相場に至るまでの相場展開を確認しておくことが重要です。

為替の年末相場にも注意しておこう

株式投資をする上では、為替相場の動きは切っても切り離せないほど重要なものです。

株式市場が閉まっている12月31日~1月3日の間に、為替相場に影響を与える世界的な出来事が起こらないとも限りません。

また、2008年~2016年頃までは「円安=株高」の図式が成り立っていましたが、近年は必ずしもこの図式が成り立つとは言えなくなっています。

特に、2021年は資源・エネルギー高、海外物価高という要因が重なっており、円安が必ずしも日本経済にとってプラスになるとは言えなくなってきています。

まとめ

今回は、年末相場の特徴や2016年~2020年までの過去5年間の年末相場について振り返った上で、2021年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点について解説してきました。

年末相場というと、ご祝儀相場となり買われそうなイメージが浮かぶかもしれませんが、2016年から2020年の直近5年間で見てみるとそうでもありません。

また、ご祝儀相場として買われやすいのは年始の大発会からであり、年末の大納会に向けては利益確定売りが出やすい傾向にあります。

年末相場の最大のリスクは、大納会から大発会に掛けて最低4日以上休場となり、持ち越しリスクが発生することです。

2020年にはイラン問題が大発会を直撃しました。

年の初めの大発会には、その年に期待されるテーマ株が買われやすい傾向にあるため、2021年の大発会には、経済正常化に向けたアフターコロナ関連銘柄や岸田新政権の政策に関する岸田関連銘柄が注目されるかもしれません。

紫垣 英昭